華やかで洗練された街並み、アートと文化の宝庫
そんなイメージで語られることの多いフランス・パリ。
世界中から観光客が訪れる花の都ですが、その一方で「パリは治安が悪い」という声も根強く存在しています。
SNSやニュースでも「スリにあった」「危ない思いをした」という投稿を見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。
実際、パリにはスリや詐欺などの軽犯罪が頻発するエリアがいくつも存在し、現地の人でさえ「近づかない」場所もあります。
- 治安が悪いと言われる根本的な理由
- 治安が悪いエリア
- 身を守るための防犯術
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なぜパリは「治安が悪い」と言われるのか?

パリという都市が「危険」と語られる背景には、表面的な犯罪件数の多さだけでなく、都市構造や社会の成り立ち、経済状況、文化的な要素などが複雑に絡み合っています。
観光名所の多さと同じくらい、治安の不安定さも「日常」として存在していることを理解することが、まず最初の一歩になります。
移民と経済格差が地域の治安に大きく影響している

フランスは移民の受け入れが非常に多い国であり、パリもまた多民族・多文化が混在する都市です。移民の多くはアフリカ諸国や中東から来ており、パリ郊外の公営住宅地に集中して暮らしています。
しかし、そうした地域では十分な教育や職業訓練の機会が限られており、若年層の失業率が高く、社会的な不満や孤立が治安の悪化へと直結しているのが実情です。
特に郊外の団地エリアでは、若者グループによる暴力や麻薬の取引が発生しやすく、警察ですら立ち入りを避けるケースもあるほど。
このような地域と観光地が地下鉄数駅分しか離れていないのがパリの特徴であり、旅行者が知らずに「危険なエリア」へ足を踏み入れてしまうことも珍しくありません。
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観光客の多さがスリや詐欺の温床になっている
パリは世界的に見ても観光客の数が非常に多く、毎年数千万人規模の人々が訪れます。
ルーヴル美術館、エッフェル塔、ノートルダム大聖堂…こうした観光スポットの周辺では、人が多く集まるという特性を利用した犯罪が絶えません。
凱旋門の近くで黒い服を来た4−5人の女性がいきなり寄ってきて来て、しゃべってくる人と、バックなどを触ってきたりしてくる人に囲まれて、スリ集団だと思いバックを抱えて力づくで逃げました。 一瞬の隙で、結構な勢いで来たのでびっくりしましたが、盗まれずに済みました。何かを持ちながら話してくるので、一瞬何だろう?って話を聞きそうになりますが、スリ集団です。リスクメイトより
スリ集団は外国人観光客をターゲットに、混雑に紛れて財布やスマホを抜き取ったり、署名活動を装った詐欺行為を行ったりします。
しかも彼らの手口は非常に洗練されており、複数人で囲む、注意をそらす、見張り役がいるなど、まるで「ビジネス」のように組織化されています。
こうした被害は日常的に発生しており、警察も全件に対応できないのが現状です。そのため、「パリは観光客が多い=犯罪者にとっての格好の狩場」という構図が出来上がってしまっているのです。

都市計画上の「中央集権型構造」が格差と緊張を助長している

パリは、セーヌ川を中心に20の区(アロンディスマン)が渦巻くように広がる構造になっており、観光地やビジネスエリアは中央部に集中し、郊外へ行くほど住宅地や労働者層のエリアが広がっています。
この「中央集権型」の都市構造は、利便性の面では優れているものの、住民間の経済格差や文化的隔たりを生みやすいという側面もあります。
中心部は観光業や富裕層向けの施設が集まる一方、郊外の公営住宅地では失業や貧困、教育機会の不均衡といった社会問題が蓄積されています。
こうした構造的な緊張は、たとえばデモや暴動という形で表面化することもあり、結果として都市全体の「治安が悪い」という印象を強めてしまっているのです。
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パリで治安が悪いとされる地域

パリを訪れる際、気になるのが「どの地域が危険なのか」という点です。中心部は華やかで整備されていますが、少し路地を入っただけで雰囲気が一変する場所も少なくありません。
また、犯罪発生件数やトラブルの多さから、地元住民でさえ近寄らないエリアも存在します。
ここでは、パリ市内および周辺地域の中で、特に注意が必要とされる地域について具体的にご紹介します。
北駅周辺・18区・19区などは犯罪件数が特に多い

パリ北駅(Gare du Nord)周辺は、国際列車ユーロスターの発着駅として観光客にとってもアクセスしやすい場所ですが、治安面では「パリで最も危ない地域のひとつ」として知られています。駅構内は常に混雑しており、スリや置き引き、ドラッグの売人などが頻繁に出没しています。
パリ北駅近くを夜に歩いていると、アフリカ系の4~5人のグループに囲まれるようにして「タバコ吸う?」と話しかけられました。見ると、手にはタバコの箱らしきもの。でも、どう見てもただのタバコ(巻きタバコのようなもの)ではなく、怪しい雰囲気が漂っていました。断ってその場を去りましたが、夜のパリ北駅周辺はやはり気を抜けないエリアだと痛感しました。旅行中の皆さんもどうか気を付けてください。リスクメイトの投稿より
この北駅を含む18区と19区の一部では、特に夜間の犯罪発生率が高く、暴力事件や強盗の報告も目立ちます。
18区はモンマルトルの丘があるなど観光エリアでもありますが、北側へ行くにつれて雰囲気が一変し、若者グループがたむろしていたり、無許可の路上販売が横行しているなど、緊張感のある空気が漂っています。
旅行者がうっかり迷い込むと、地図やスマートフォンを見ている隙にスリに遭うケースが多いため、このエリアでは特に周囲への警戒が求められます。
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サン・ドニやボビニーなどの郊外は地元民でも警戒エリア
パリ中心部から電車で20〜30分ほどの郊外に位置するサン・ドニ(Saint-Denis)やボビニー(Bobigny)は、地元の人ですら「治安が悪い」と語るほどの警戒エリアです。
これらの地区は、移民系の住民が多く暮らしており、長年にわたって失業率や教育機会の格差、貧困問題を抱えています。
昼間でも空気が荒れていることがあり、特に夜になると無法地帯のような雰囲気になることも。
暴動や放火事件が報道された地域もこのエリアに含まれており、警察も積極的なパトロールを行っている一方で、犯罪抑止には限界があるのが実情です。
観光客が訪れる理由はほとんどない場所ではありますが、誤って通過してしまったり、格安ホテルを予約してしまうこともあるため、事前に地名をしっかりチェックすることが大切です。

フランス全体でもマルセイユやリヨンの一部は注意が必要

パリ以外にも、フランス国内には治安に課題を抱える都市が存在します。
特に南仏の港町マルセイユは、美しい海と陽光にあふれる街である一方で、麻薬取引やギャング間の抗争が絶えず、フランス国内で最も犯罪率が高い都市としてしばしば名前が挙がります。
また、フランス第3の都市リヨンでも、一部の区(とくにヴォー=アン=ヴランなど)では軽犯罪が多発しており、
若者による暴力や窃盗などが観光客にも及ぶケースが報告されています。
これらの都市は観光資源が豊富で魅力的ではありますが、エリア選びや時間帯の行動には慎重さが求められます。
とくに初めて訪れる方は、中心部や観光エリアからあまり外れないよう心がけるのが賢明です。
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パリの文化・歴史・街の特徴が治安とどう関係しているか

パリの治安問題を理解するには、単に「犯罪件数が多い」「危ない地域がある」という表面的な話だけでは足りません。
この街が育んできた文化的背景、歴史的な成り立ち、社会構造が、治安のあり方にも深く影響を与えています。
観光地としての華やかさの裏にある「パリという都市の根本的な気質」に目を向けることで、旅行者としての行動指針もより明確になるでしょう。
フランス革命の精神が今も「抗議・デモ文化」として根付いている
パリはフランス革命の中心地であり、政治・社会に対して「声を上げること」が市民の誇りとして根付いている都市です。
この精神は今も強く受け継がれており、日常の中で抗議やデモが頻繁に行われる文化があります。
- 労働争議
- 年金制度の変更
- 移民政策への反発など、
デモのテーマは多岐にわたり、場所や規模もさまざまです。ときに警官隊との衝突が発生し、周囲の商店が被害を受けることもあるため、旅行者としては「巻き込まれない距離感」を保つことが重要です。
日本では「デモ=特別な出来事」という印象があるかもしれませんが、パリではそれが「日常」であり、
それが都市全体の治安の印象に影を落としているという側面も見逃せません。
芸術と自由を重んじる社会は「個人主義」を強く伴う

パリは芸術と自由の都として知られ、個人の表現や生き方が何よりも尊重される文化があります。
この自由への強いこだわりは、「他人の行動に干渉しない」「距離を保つ」といった考え方にもつながっており、一見すると冷たく感じられることもありますが、それはパリ流の「他者への敬意」の一形態です。
しかしながら、この個人主義的な空気は、治安面では「周囲に無関心」という形で現れることもあります。
たとえば、通りで何か異変があっても、見て見ぬふりをする人が多く、犯罪を目撃してもすぐに助けが得られないことがあるのも事実です。
つまり、自由が尊重される都市だからこそ、「自分の安全も自分で守るべき」という無言の前提があり、
旅行者もそこにうまく適応していく必要があります。
都市美観の維持が「監視の手薄さ」に繋がっている一面もある
パリ市内では、古くからの街並みや景観が保護されており、監視カメラや防犯設備の導入にも制限がかかっている場所があります。
美しい景観を守るために、現代的な設備を最小限にとどめていることが、防犯という観点では「監視の目が届きにくい」というデメリットを生んでいます。
地下鉄の駅構内や一部の広場、公園などでは、カメラの数が少なく、犯罪の抑止力になりにくいのが現実です。
また、街灯の数や照度が十分でない場所も多く、特に冬季は夕方から一気に視界が悪くなります。
このように、パリの「美意識」や「歴史保護」の姿勢が、結果的に治安管理の難しさを生んでいるという側面も存在しているのです。
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パリで身を守るために必要な具体的な行動と心構え

どんなにパリの街が美しくても、観光客としてその中に身を置く以上、自衛の意識は不可欠です。
事前にリスクを知るだけでなく、それに対して「どう行動するか」が、安全な旅の成否を分けるカギとなります。この章では、旅行者として現地で実践できる具体的な防犯行動と心構えを紹介していきます。
治安が悪い地域には「行かない・近づかない」が鉄則
最も基本的で、なおかつ最も有効な対策は「危険な場所には行かない」ということです。
パリには魅力的な観光地が数多くありますが、その中には前章で紹介したように、治安の悪いエリアが隣接しているケースも珍しくありません。
地図やガイドブックでは見落としがちな治安の違いを見分けるためには、事前に外務省の海外安全ページやSNSなどで現地のリアルな声をチェックすることが大切です。
また、ホテルを予約する際は「最寄駅の名前だけで判断しない」ことも重要。
駅から徒歩圏でも、その途中が危険な通りだったという例は多く、口コミや地元の治安マップも活用しましょう。
現地に着いてからは、不安を感じるような場所には無理に近づかず、明るく人通りの多い道を選ぶことが基本です。
迷ったときは無理に歩き回らず、近くのカフェやホテルで一度立ち止まって、落ち着いて方向を確認するようにしましょう。
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持ち物・服装・言動は「目立たない」ことが最大の防犯策
パリでは、「いかにも観光客です」と伝わる服装や行動をしていると、それだけで犯罪者の標的になりやすくなります。
ブランドロゴの入った派手なバッグやカメラ、スマホを手にしたまま歩くなど、視覚的に「お金を持っていそう」という印象を与える装いは避けるべきです。
また、バッグは必ず身体の前にかける、リュックは貴重品を入れない、現金は小分けにするなど、見せない・触らせない・分散させるが防犯の基本となります。

特に地下鉄や観光地では、財布やスマホをポケットに入れっぱなしにしていると、数秒で盗まれてしまうこともあります。
言動に関しても、地図を広げたり、大声で日本語で話していたりすると、「土地勘のない観光客」だと見抜かれてしまいます。あくまで自然に、地元の人のように振る舞うことが、最大の防犯対策です。
夜間の外出は控え、行動は常に慎重に判断する
パリの街は昼と夜とで空気が大きく変わります。観光地であっても、日が暮れると人通りが減り、スリや強盗、薬物取引などの犯罪が増加する傾向があります。そのため、できる限り夜間の外出は避けるのが安全策です。
どうしても外出する必要がある場合は、信頼できる交通手段(公式タクシーやUber)を使い、できるだけ一人で行動しないようにしましょう。また、夜遅くまで営業している店は限られているため、事前に目的地と帰りのルートを確認しておくと安心です。
さらに、酔っている人が多い場所やバーの密集地帯では、言い争いやトラブルに巻き込まれることもあります。夜に何か違和感を覚えたら、「気のせいかもしれない」と無理に思わず、すぐにその場から離れる判断力が、自分を守る一番の武器になります。
まとめ|「パリの現実」を知ることで旅の安全性は格段に上がる
「パリの治安が悪い」と言われる背景には、歴史的な構造、都市の成り立ち、そして文化的価値観が深く関係しています。スリや詐欺に遭いやすい観光地、地元民でさえ警戒する郊外の一部エリア、夜になると様子が変わる通り──そうしたリスクを正しく知っておくことで、旅行者ができる対策も明確になります。
大切なのは、恐れることではなく、知ったうえで適切に行動すること。
危険とされる地域には近づかない、服装や言動を落ち着かせて目立たないようにする、夜間の移動は最小限に──
これらを実践するだけで、パリでの旅の安全性はぐっと高まります。
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