世界でも数少ない「閉ざされた国」である北朝鮮。その独特の体制と文化、そして報道される過激なイメージから、「実際に行けるの?」「行ったら帰ってこれるの?」と不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
一方で、好奇心を刺激される場所として「一度は行ってみたい」と考える人も一定数存在します。
しかし、北朝鮮を訪れるということは、他国への旅行とはまったく異なる意味を持ちます。自由な発言や行動は通用せず、すべてが「国家のルール」に従ったものとして管理される旅なのです。
この記事では、北朝鮮を旅行するうえで絶対に知っておくべき7つの注意点を中心に、「行くかどうかの判断」に必要な情報を冷静にお伝えしていきます。
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「北朝鮮旅行に行くと帰ってこない」はマジ!知っておくべき7つの危険性

北朝鮮への渡航は、他国への旅行と比べて、格段にリスクが高いのが現実です。
観光客であっても、たった一枚の写真や何気ない一言が「国家に対する敵対行為」と見なされる可能性すらあります。
ここでは、北朝鮮を訪れる前に知っておかなければ命取りになるかもしれない、7つの具体的なリスクと注意点を解説します。

許可のない写真撮影や発言が「国家への侮辱」とされる
北朝鮮では、撮影が許可されている場所以外でカメラやスマホを構える行為は、国家への侮辱やスパイ行為とされる可能性があります。とくに注意すべきなのが、
軍人や兵器、政府施設、貧困を示すような場所
金日成・金正日・金正恩の肖像画や銅像の「部分的な撮影」
人々の生活の「ありのまま」を捉えた写真
こうした写真を無断で撮影・所持しているだけで、拘束や取り調べの対象になることがあるのです。
また、軽い冗談のつもりでも、指導者や体制に関する発言をすれば、それだけで「国家の尊厳を傷つけた」とされる重大犯罪になり得ます。
過去には観光客が拘束され「帰ってこない」事例もある
北朝鮮旅行のリスクを最も象徴するのが、過去に実際に起きた外国人観光客の拘束・逮捕事例です。
中でも有名なのが、2016年にアメリカ人学生オットー・ワームビア氏が、政治ポスターを盗んだとされて15年の労働教化刑を宣告された事件。彼は拘束から17か月後、昏睡状態のまま米国に送還され、死亡しました。
BBC NEWS JAPAN 北朝鮮、米に2億円超を請求か 解放後に死亡の米学生の医療費で
このように、旅行者のつもりでも「体制への反逆者」と見なされる可能性がある国であることを、軽く見てはいけません。
日本と北朝鮮は国交がないため、トラブル時の保護は一切期待できない
最も深刻なのが、日本と北朝鮮の間には正式な外交関係がないという点です。つまり、万が一トラブルが起きても、日本大使館は存在せず、政府による直接の支援や保護が受けられません。
代わりにスウェーデン大使館が一定の保護活動を行うとされていますが、実質的な動きや交渉は非常に制限されており、拘束されたら外部との接触すら困難になるケースもあります。
このため、旅行中に問題が発生したとしても、解決される保証はないどころか、永遠に家族と連絡が取れなくなる可能性すらあるのです。
国家体制に対する「忠誠」を旅行者にも求められる

北朝鮮では、訪問者であっても国家体制に敬意を示す姿勢が求められます。
たとえば、指導者の肖像画の前では頭を下げて礼をしなければならず、写真を撮るときは必ず全身をフレームに収めることが義務とされる場合もあります。
また、ガイドからの案内中には、笑ったり、無関心な態度を見せたりすることも「不敬」とされる可能性があるため、
常に真剣に、忠実に行動する姿勢を求められるのが現地でのリアルです。
観光といっても、「楽しむ」のではなく「見学させていただく」という感覚で行動することが強く求められます。
通信・自由・表現の制限により日常的な行動すら不自由

北朝鮮においては、私たちが当たり前に使っているインターネットやスマートフォンの通信機能は一切通用しません。
旅行者がWi-Fiに接続できる場所は限られており、国際ローミングも基本的に不可能。外部との通信手段はほぼ遮断され、「世界から切り離された状態」で滞在することになります。
また、宿泊先や観光施設でさえも、自由に動き回ることはできません。ホテル内の外出制限や、街中での散策は禁止されており、常に同行する政府公認のガイドの許可なく一歩も動けない状態となります。
さらに、日記をつける、動画を撮る、街の様子をメモするなど。。
これらもすべて「監視の対象」となり得るため、行動一つひとつに「国家の目」があることを忘れてはいけません。
宗教・政治に関する話題は一切タブー

北朝鮮では、政治的な話題だけでなく、宗教や思想、他国のリーダーに関する言及もタブーとされています。
宗教活動自体が国内では厳しく制限されており、聖書や十字架の持ち込みすら問題視されることがあります。
そしてもっとも注意が必要なのが、「指導者に関する話題」です。たとえ軽口であっても、
「金正恩ってちょっと太ってるよね」
「本当にあの人が国をまとめてるの?」
などの発言は、国家侮辱罪にあたる極めて危険な行為となります。
観光中、ガイドとの会話の中で、つい比較や批判をしてしまわないよう意識して口を慎むことが大切です。北朝鮮では、「何を言ったか」ではなく、「どう受け取られたか」が重要視されるため、誤解を生む発言は命取りになりかねません。
観光地でも常にガイドの指示に従わなければならない
北朝鮮旅行の最大の特徴が、すべての観光が政府公認のガイド付きで行われるという点です。
このガイドは単なる案内人ではなく、あなたの行動・発言を監視し、必要があれば報告する役割も持っています。
観光中に許可なく移動したり、カメラを向けたり、荷物から何かを取り出したりすると、即座に制止され、場合によってはその場で取り調べの対象になることもあります。
また、予定されていない質問や写真撮影、施設の立ち入りは「勝手な行動」と見なされ、グループ全体がツアーを中断させられる事態にも発展しかねません。つまり、北朝鮮旅行とは、
- ガイドの指示が絶対
- 個人の自由な判断や行動は許されない
- 「好奇心」はトラブルの元になる
という前提のもとで進められる、極めて制約の多い旅であるということです。
そもそも日本人は北朝鮮に行けるのか?
北朝鮮という国は、外国人の入国に対して非常に制限を設けている国のひとつです。
では実際に、日本人が北朝鮮に行くことは可能なのか?
この問いに対する答えは、やや複雑で、「法的には行けるが、現実的には極めて難しい」というのが正確な表現です。
日本人の渡航自体は法的に可能だが、政府は渡航自粛を呼びかけている

まず確認しておきたいのは、日本国政府が北朝鮮に対して発令している「渡航自粛勧告」の内容です。
現在、外務省は北朝鮮全土に対して、2017年以降「渡航は自粛して下さい」という警告を出し続けています。これは、「やむを得ない事情がない限り、訪れるべきではない」という強いメッセージであり、万が一、現地でトラブルに巻き込まれても、日本政府による支援や交渉が非常に困難であることを意味します。
ただし、「法的に絶対禁止されているわけではない」ため、渡航自体は可能です。実際、過去には一部のジャーナリストや研究者、あるいは特殊なツアーに参加した旅行者が入国した記録もあります。とはいえ、観光目的で行くには非常に高いハードルがあるのが実情です。
旅行は政府公認のツアーのみで、個人での入国はほぼ不可能

北朝鮮旅行の最大の特徴は、「完全な団体旅行(ツアー)」でしか入国できないという点にあります。
個人で航空券を取って、自由に宿を予約して…という旅のスタイルは、一切通用しません。すべてが北朝鮮政府が認可した旅行会社を通してのみ申請・手配される必要があります。代表的な旅行ルートは以下の通りです。
- 中国(北京)からの団体ツアーに参加し、飛行機または列車で平壌へ入国
- 北朝鮮国内の観光は、事前に決められた日程とルートでのみ行動
- 常に2名以上のガイドが同行し、監視・案内・通訳を兼ねる
旅行者が自分で行き先を決めたり、ガイドのいない場所を歩くことは一切許されません。
また、ツアーの申込時には、パスポートのコピーや職業、訪問歴、写真、時には思想信条まで問われることがあり、
「入国審査の前に「選別」される」のが普通です。
さらに、日本人に対しては政治的な事情や歴史的背景を理由に入国拒否される可能性も高く、旅行会社によっては「日本人は原則として受付不可」としているところも存在します。
まとめ|北朝鮮旅行に行くと帰ってこれない可能性あり、デメリットが多すぎるからやめておこう
北朝鮮への旅行は、世界でも最も特異な旅のひとつと言っても過言ではありません。そこには他国にはない強烈な政治色、完全な統制体制、そして「異質さ」を肌で感じる機会が存在します。
だからこそ、「一度はこの目で見てみたい」「メディアでは伝わらない現実を知りたい」という欲求を抱く人もいます。実際、過去に北朝鮮を訪れた一部の旅行者は、「人生観が変わった」「ここでしか味わえない緊張感があった」と話すほど、「体験としての価値」は非常に大きいのも事実です。しかし、その裏にあるのは、
- 行動の自由が一切ない
- 写真も発言も常に制限される
- 政府への「忠誠」が無言のうちに求められる
- トラブル時には誰も助けてくれない
- 拘束・逮捕の可能性すら現実にある
といった、「リスクしかない」と言えるほどの旅の厳しさです。
「行けるかどうか」よりも、「本当にその旅に意味があるのか?」という視点で判断することが大切です。
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