カラフルな街並み、陽気なマリアッチ、タコスにテキーラ、そして古代文明の遺跡…。メキシコは観光資源が非常に豊富で、世界中の旅行者を惹きつけてやまない国です。しかし一方で、「メキシコは危険すぎる」「絶対に一人では行かないほうがいい」といった声が後を絶たないのも事実です。
実際にメキシコは世界でも最も治安が悪い国の一つとして頻繁に名前が挙がる国であり、旅行者が巻き込まれる事件も少なくありません。特に女性旅行者にとっては、命にかかわるようなリスクも存在するため、「観光地だから大丈夫」という油断が命取りになる可能性すらあります。
- メキシコが「治安が悪すぎる」と言われる理由
- 日本人女性が直面しやすいリスク
- 避けるべき危険な都市・地域
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なぜメキシコは「治安が悪すぎる」「やばい」と言われるのか?

メキシコの治安の悪さは一朝一夕に生まれたものではありません。
その背景には、麻薬組織の台頭と国家機能の弱体化、そして貧困と格差の拡大といった複合的な要因が絡み合っています。ここでは、その根本的な理由を深掘りしていきます。
麻薬カルテルが国家を超えて影響力を持っている

メキシコの治安悪化の最大の要因とされているのが、麻薬カルテルの存在です。
これらの組織は、単なる裏社会の存在をはるかに超えており、経済、政治、司法、さらには一部の自治体をも牛耳る「影の国家」のような権力構造を形成しています。
「シナロア・カルテル」「ハリスコ新世代カルテル(CJNG)」などが有名で、これらの組織はアメリカへのドラッグ供給ルートを握る一方、メキシコ国内での縄張り争いや敵対勢力への見せしめとして、日常的に凄惨な事件を引き起こしています。
警察が立ち入れない「無法地帯」も点在しており、政府の統治が事実上届かない地域が数多く存在しています。
マフィアによる抗争で市民が巻き込まれる事件が後を絶たない
⚠️メキシコでバスジャックに遭いました… 区間はパレンケ→カンペチェ→メリダ 手元にあった現金4000ペソ(約30000円分)が盗まれました バスはADOで一等バス。しかも昼行便です。 バスジャックの状況としては、何もないところで急にバスが停車し自警団か警官を装った男2名が車両に入ってきた それから外国人のみパスポートチェックをし、自分だけ後部座席につれて行かれボディ&カバンチェック、その時に現金を盗られました。リスクメイトの投稿より
カルテル同士の抗争は、常に血で血を洗う争いです。そしてその被害を受けるのは、必ずしも抗争当事者だけではありません。
時に、標的となった相手を狙うために住宅街や市場で爆破が行われたり、家族ごと焼き殺される事件が報じられるなど、一般市民が巻き込まれることは日常茶飯事となっています。
特に地方都市では、「誰がどの勢力に属しているのか分からない」状態の中で、ちょっとした誤解が命取りになるようなケースもあります。それゆえに、現地住民ですら外出を控える時間帯や場所があるのです。
殺人・誘拐・強盗の発生率が世界トップクラス
国際的な統計を見ると、メキシコは殺人事件の件数、誘拐発生率、強盗件数ともに世界でも常に上位にランクインする国です。2023年には、1日に80人以上が殺害されたというデータもあり、これは事実上の「内戦状態」に近い水準です。
さらに問題なのは、これらの事件の多くが検挙されることなく未解決のまま終わってしまう点です。
犯罪が日常化し、警察や司法が機能していない地域では、被害者であっても声を上げることができず、沈黙を強いられているという現実があります。
警察や軍にも深刻な汚職が蔓延している
私たちははレンタカー移動をしました。速度に気をつけて運転をしていました。明らかに速度を違反してない状況で、正規の警察が速度違反だと言い罰金を取られる羽目に…挙げ句の果て、飛行機にも乗りそびれて追加でいっぱくぶんの宿代もかかりました…リスクメイトの投稿より
メキシコでは、市民を守るはずの警察がカルテルと癒着している事例が後を絶ちません。
実際、カルテルからの賄賂を受け取ることで、犯罪捜査が止められたり、逆に罪のない市民が冤罪で拘束されたりすることすらあるのです。
また、軍や地方の政治家までもが買収されている例が多く、「誰を信じていいのか分からない」という不信感が社会全体に蔓延しています。
旅行者としても、「何かあっても警察に相談できる」と思い込むのは危険で、時には警察官そのものが犯罪グループと関係しているケースも存在します。
報道関係者や活動家が標的になるほど言論の自由が制限されている

メキシコは、ジャーナリストの死亡数が世界最多レベルの国でもあります。報道関係者や人権活動家が、麻薬組織の内部情報や政府の不正を明るみにしようとした結果、暗殺されるケースが毎年のように発生しています。
つまり、それだけ「真実を語ることが命を危険にさらす行為」とされている国だということです。
こうした背景は、旅行者にも無関係ではありません。たとえば、現地の事情をSNSで無邪気に投稿しただけでも、現地の力関係を知らずに不興を買う可能性があるのです。
貧困層の多さと若年層のギャング加入が深刻
メキシコには高級リゾートや発展した都市も多くありますが、その陰には大きな貧困と社会格差があります。教育の機会に恵まれない若者たちは、生き延びる手段としてギャングやカルテルに身を寄せることも少なくありません。
その結果、10代・20代の若者が誘拐や殺人の実行犯として関与している事例が非常に多いのです。
つまり、外見上は「普通の青年」に見える人物でも、一歩間違えば命を脅かす存在になり得るという不気味さがある国でもあります。

日本人女性がメキシコで直面しやすいリスク

「治安が悪い」と聞いても、どのような危険が自分に関係あるのか、イメージしづらい方も多いかもしれません。
ですがメキシコでは、日本人であること、そして女性であることが、犯罪の標的になりやすい要因になり得ます。
特に近年は、SNSの普及で日本人旅行者の行動が可視化されやすくなっており、「観光客=お金を持っている」「警戒心が薄い」と思われやすいターゲットにされやすいという現実もあります。
観光客を狙った誘拐や詐欺事件に巻き込まれるケース
メキシコでは外国人観光客を狙った「身代金目的の誘拐」「偽警察による詐欺」「ぼったくりタクシー」といった手口が非常に多く見られます。
中でも日本人は、言葉の壁や土地勘のなさから「抵抗しづらい相手」「騙しやすい相手」として目をつけられやすいのです。
- 空港やバスターミナルで声をかけてくるタクシー運転手に乗った結果、人気のない場所で脅されて現金を奪われる
- 観光客を装った詐欺師に「警察の検査だ」とパスポートや所持金を奪われる
- 「市内観光ツアー無料」と誘われ、連れて行かれた先で拘束される
などが実際に報告されています。
一見親切そうな現地人に声をかけられたときは、まず疑ってかかるくらいでちょうどいいと心得ましょう。
日本人は金銭的に狙われやすく、犯罪者の標的になりやすい

メキシコでは、「日本人=裕福」というイメージが根強く残っています。
このため、日本人観光客はスリや強盗、詐欺の標的になりやすい存在です。特に外見や服装が目立っていると、「観光客」としてすぐに認識され、ターゲットとして目をつけられる可能性が高くなります。
空港やホテル、人気の観光地でさえも油断は禁物です。現地であまりに高級ブランドを身につけていたり、大きなカメラをぶら下げていたりすると、「金を持っている人」という目で見られるリスクが跳ね上がります。
また、ATMの利用時にも注意が必要です。人通りの少ない場所や夜間の引き出しは、待ち伏せされて襲われる可能性すらあるため、日中の明るい場所、人目のある銀行などでの利用を徹底しましょう。

女性一人旅には性的暴行やハラスメントのリスクも
女性が一人で行動していると、現地男性からの視線や接触が強くなる傾向があります。
特にナイトクラブ、バー、観光客が集まる飲食店などでは、アルコールや薬物を使った性犯罪の事例も報告されており、軽い気持ちでの現地交流が危険な結果に繋がることもあるのです。
一部の加害者は、「外国人女性は簡単に口説ける」「拒まない」という偏見を持って近づいてくることもあり、日本人女性がターゲットになるケースも少なくありません。
また、夜遅くの移動や、見知らぬ人からの飲み物の受け取りは絶対に避けるべき行為です。自分の安全は自分で守るしかない環境にいることを強く意識する必要があります。
服装や行動に文化的な誤解が生まれやすい

メキシコはラテン系の開放的なイメージがありますが、地域によっては保守的な文化も根強く残っており、露出の多い服装やスキンシップを「挑発的」と受け取られることもあるため、注意が必要です。
例えば、タンクトップやショートパンツで街を歩いていると、現地の男性から声をかけられる、じろじろ見られる、執拗に尾行されるといったトラブルに遭うことがあります。
また、気さくに会話をしたつもりが「好意がある」と誤解されてしつこく付きまとわれる…というケースも非常に多いです。
文化の違いを理解し、「親しみやすさ」と「隙のある態度」は明確に分けて行動することが、安全な旅のカギとなります。
女性同士・カップル旅行でも安心できない場面がある
一人旅だけでなく、女性同士のグループ旅行やカップルでの旅でもリスクがゼロにはなりません。
たとえ複数人でいても、観光中にバラバラに行動したり、写真に夢中になって荷物や周囲に注意が向かなくなったりすることはよくあります。
特にショッピングモールや市場などの人混みでは、グループ全体が「観光客集団」として見られ、組織的なスリや窃盗に狙われやすいのです。
また、LGBTQ+カップルにとっても、場所によっては同性愛に対する差別意識が強く残っている地域が存在するため、現地文化に応じた行動が求められます。
メキシコで特に治安が悪い避けるべきやばい危険地域

メキシコでは、観光地の中にも安全とは言いがたい場所が存在します。
「リゾート地だから」「有名な都市だから」と油断せず、リアルタイムの治安情報を確認したうえで渡航判断をすることが重要です。
以下では、特に避けるべきとされる治安最悪レベルの都市や地域を紹介します。
シウダー・フアレスやティフアナは殺人発生率が極端に高い
まず最も注意すべきは、アメリカ国境沿いに位置するシウダー・フアレス(Ciudad Juárez)やティフアナ(Tijuana)です。
これらの都市は、アメリカとの密輸ルートを押さえるため、複数の麻薬カルテルが激しく抗争している地域です。
国際調査によると、これらの都市は「世界で最も殺人事件が多い都市ランキング」に常に上位にランクインしており、1日あたりの殺人件数が2桁を超える日もあるほどです。
特に問題なのは、その多くが「一般市民や旅行者が巻き込まれている」点です。
- たまたま通りかかった車が銃撃を受けた
- レストラン内で抗争が起き、無関係の客が犠牲に
- タクシーに乗っただけで、別勢力の車両に追跡される
など、「そこにいただけで巻き込まれる」ような事件が後を絶ちません。
ティフアナは観光客も多く、日本人の訪問も増えていますが、夜間外出や郊外への移動は非常に危険です。
イラプアト・サカテカスでは麻薬組織による支配が進んでいる
中央高原部に位置するイラプアト(Irapuato)やサカテカス(Zacatecas)は、以前はそこまで危険視されていませんでしたが、近年急速に治安が悪化しています。
理由は明確で、麻薬組織による完全な「実効支配」が進んでいるからです。
これらの地域では、
- 警察官がカルテルに殺害される
- 市長や政治家が脅迫を受けて辞任
- 一般市民が「疑われた」だけで処刑される
といった恐ろしい現実が広がっており、外務省や米国国務省もレベル4(退避勧告)に近いレベルで警告を出しています。
特にイラプアトは、一時期「世界で最も殺人の多い中規模都市」として記録され、平和だった農業地帯が一変して無法地帯になってしまいました。治安回復の兆しは見られず、旅行者が観光目的で訪れるには非常にリスクの高いエリアです。
アカプルコなど観光都市にも深刻な治安リスクがある
意外かもしれませんが、アカプルコ(Acapulco)のようなリゾート都市にも深刻な治安リスクが存在します。
かつてはハリウッドスターも訪れる高級リゾートだったアカプルコですが、近年は麻薬カルテルの抗争の場となり、観光客にも影響が及ぶ事件が頻発しています。例えば、
- ビーチ沿いで銃撃事件が起きた
- ホテルの近くで遺体が見つかる
- レストランで観光客が巻き込まれる事件が報道される
など、「観光地だから安全」という神話が完全に崩壊しているのが現状です。
現地政府は観光収入を守るために治安維持を強化しているものの、カルテルの勢力と警察の力のバランスが崩れている地域では、根本的な治安改善が難しいのが実情です。
まとめ|メキシコは場所によっては治安が悪すぎる!女性旅行者は注意して行動を
メキシコは間違いなく魅力的な国です。美しい自然、歴史ある遺跡、世界に誇る料理、陽気で温かい人々――それらを求めて毎年数百万人の旅行者がこの国を訪れています。
ですが、その反面、国家機能すら脅かすほどの暴力と犯罪が、いまだに多くの地域で日常化しているのも事実です。
特に女性旅行者にとっては、日常的な警戒レベルを日本よりも数段上げる必要がある国だと言えるでしょう。
スリや詐欺といった軽犯罪だけでなく、誘拐や性的暴行、命を脅かすような凶悪事件にまで発展するケースも、決して他人事ではありません。
この記事で紹介したように、メキシコの治安が悪化している理由は単に「治安が悪い」からではなく、麻薬組織・政治腐敗・貧困・若年層のギャング化といった深い社会構造の問題によるものです。
だからこそ、旅行者として重要なのは以下の姿勢です。
- 「メキシコは危険」ではなく、「どこが」「なぜ」危険なのかを理解すること
- 観光情報だけでなく、現地の治安情報や文化背景にも目を向けること
- 「観光客だから許される」という甘い考えを一切持たないこと
旅行は、無理して「行くべき」ものではありません。
もし行くなら、それは自分の命を守るという強い覚悟と、現地へのリスペクトを持って初めて価値ある体験になるのだと思います。
メキシコには確かに安全に旅行できる地域もありますし、素晴らしい出会いもあるでしょう。
ですが、それはあくまでも「慎重な選択と行動の上に成り立つ安全」だということを、どうか忘れないでください。