近年、「ノマドの聖地」「世界一コスパが良い国」などと話題になっている東欧の小国・ジョージア(旧グルジア)。物価の安さや長期滞在可能なビザ制度、そして雄大な自然と素朴な文化に惹かれ、日本からも多くの旅行者が足を運ぶようになっています。
一方で、「ジョージアって本当に安全なの?」「治安が悪いって聞いたけど…」といった不安の声も根強く存在します。
確かに、ニュースでは近隣国ロシアとの緊張関係が取り沙汰されており、一部のエリアではトラブルや注意情報が発信されていることも事実です。
本記事では、ジョージア旅行で注意が必要な危険エリア、最新の治安情報、入国条件、文化的注意点を総合的に解説します。
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ジョージア旅行で注意が必要な危険エリア・スポット

コーカサス地方に位置するジョージアは、美しい山岳地帯やワイン文化、歴史的な街並みが魅力の人気旅行先となっています。しかし、観光客にとって安全とされる地域が多い一方で、政治的緊張や武力衝突の影響を今も抱える「立ち入り禁止」レベルのエリアも存在します。
旅行を計画する際には、「どこへ行っても大丈夫」と油断せず、現地情勢に基づいた正確な情報を事前に把握することが重要です。
アブハジア自治共和国は事実上の立ち入り禁止区域
ジョージアの北西部に位置するアブハジア自治共和国は、1990年代の内戦とロシアとの関係悪化を背景に、現在は「ジョージア政府の統治が及ばない」事実上の独立状態にあります。
現在この地域はロシアの支援を受けた政権によって管理されており、ジョージア政府はアブハジアを通じた入出国を違法行為とみなしています。
旅行者にとってのリスクは次のとおりです。
- ロシア経由でアブハジアに入国すると、ジョージアに再入国できなくなる可能性がある
- 治安当局や軍による身柄拘束や尋問の対象になるリスクがある
- 領域内の医療・通信・インフラが不安定で、緊急時のサポートが極めて困難
外務省もアブハジアについて「渡航中止勧告(レベル3)」を発出しており、観光目的での立ち入りは事実上禁止と考えたほうが安全です。
たとえスリルや好奇心があっても、命の危険や国際問題に巻き込まれる可能性を考慮すれば、絶対に避けるべきエリアです。
南オセチア地域も危険度が高く、旅行者は近づかないことが原則
ジョージア中北部に位置する南オセチア地域も、アブハジアと同様に分離独立を主張する親ロシア派政権の支配下にあります。2008年にはジョージアとロシアとの間で南オセチア戦争が勃発し、多くの死傷者を出しました。
現在でもこの地域は事実上、ジョージア政府の統治下にはなく、軍や警備当局による厳重な管理が行われています。国境線の管理も極めて不透明で、GPSや地図を頼りに行動すると知らぬ間に越境してしまい、拘束される危険性もあります。実際に、
- 国境線付近での外国人拘束例
- ロシア軍による「ラインシフティング」(境界線の移動)による領域拡大工作
- 南オセチア側での通信遮断や外部との接触制限
などが報告されています。
また、一般観光客向けの交通インフラや宿泊施設も整っておらず、緊急時のサポートは一切期待できません。
この地域についても、外務省は渡航中止勧告(レベル3)を発出中です。したがって、ジョージアを旅する際は、南オセチア地域の国境や周辺エリアにも近づかないことが鉄則です。
ジョージアとロシアの現在から見える地政学的リスク

ジョージアを語るうえで避けて通れないのが、ロシアとの長年にわたる緊張関係です。
2008年の「南オセチア戦争」以降、両国の外交関係は悪化し、現在も国境付近の一部地域では不安定な情勢が続いています。
この章では、ジョージアとロシアの関係性が旅行者にとってどのようなリスクとなり得るのかを、冷静に見ていきましょう。
ロシアとの緊張関係は継続中
2008年にロシアが南オセチアとアブハジアの独立を一方的に承認したことをきっかけに、ジョージアとロシアは軍事衝突を経験しました。その後、両国の国交は事実上断絶状態となり、現在も関係改善の兆しは限定的です。
もちろん、ジョージアの中心都市トビリシや観光地でこの緊張感が直接感じられることは少なく、旅行者にとって「今すぐのリスク」は高くありません。
しかし、政治情勢が突然変化することもあり得るため、旅行前には外務省の海外安全情報や現地ニュースをチェックしておくことが重要です。
また、ジョージア国民の多くが反ロシア感情を抱えていることも背景にあり、滞在中に政治的な話題に軽々しく触れるのは避けた方が無難です。

ロシアからの移住者の増加に伴う現地市民の複雑な反応
2022年のウクライナ侵攻以降、ロシアからの移住者がジョージアに急増しました。
この影響で、トビリシやバトゥミでは不動産価格の高騰や都市部の混雑、言語・文化的な摩擦が起きており、現地のジョージア人との間に緊張感が高まっているケースも見られます。
これは外国人旅行者にとって直接の脅威ではありませんが、ロシア語を話すことで誤解を受けたり、差別的な視線を向けられる可能性がある点は覚えておくとよいでしょう。
基本的に日本人であれば、現地では歓迎されることが多いですが、ロシア語に似た発音や文化的な要素を見せることで、不意に不快な反応を引き出してしまう場合もあります。
「中立でいる」「政治的発言を控える」ことが、現地でのトラブル回避につながります。
情報発信やSNS利用も慎重にすべき
現地での写真撮影やSNSでの発信は、多くの旅行者にとって旅の楽しみの一つですが、政治的に敏感な場所や、軍・警察施設、政府関連の建物などは撮影が禁止されていることがあります。
特に、国境付近やデモ活動の現場などでは、無断撮影がトラブルや誤解を招く原因になる可能性があります。
現地で軍服を着た人や警備員がいる場所を撮影する際には、必ず許可を取るか、撮影を避けるようにしましょう。
また、SNSで「危険な地域に来ています」などと投稿してしまうと、万が一何かあったときに自己責任とみなされるリスクもあります。写真や動画の発信は場所を選び、内容に配慮を持つことが重要です。
ジョージアの入国条件と現地ルール

ジョージアは、日本人を含む多くの国籍に対してビザなしでの長期滞在を認めている珍しい国として知られています。近年では「ノマド天国」とも呼ばれ、移住やワーケーションを視野に訪れる旅行者も増加しています。
とはいえ、入国に際しての基本ルールや、現地で注意すべき文化的・社会的マナーを理解しておくことはとても大切です。
この章では、旅行を快適に、そしてトラブルなく楽しむための基礎情報をまとめて解説していきます。
日本人はビザ不要で最長1年間の滞在が可能
ジョージアは、日本を含む約90カ国の国民に対してビザなしでの入国を認めており、最大1年間の滞在が可能です。これは観光だけでなく、ワーケーションや短期の居住にも適した制度で、非常に柔軟な滞在ルールとなっています。
入国時に必要なのは、有効なパスポートのみで、往復航空券やホテルの予約確認書の提示を求められるケースは少ないですが、念のため準備しておくと安心です。
また、長期滞在を予定している場合は、現地で銀行口座を開設したり、居住証明を取得する手続きも可能ですが、その際はある程度の英語またはロシア語の知識が求められることもあります。
このように、ジョージアは他のヨーロッパ諸国と比べても入国・滞在のハードルが低く、フレンドリーな政策を採用している国の一つです。
電子SIM・海外保険など最低限の準備は必須
治安が安定しているとはいえ、ジョージアは医療制度や行政サービスがまだまだ発展途上である部分も多く、万が一の病気やトラブルに備えての準備は欠かせません。
まず通信環境に関してですが、ジョージアではプリペイドSIMが安価で使いやすい一方、旅行者にとってはeSIMの方が便利な場合もあります。空港や市内で手軽に契約できるものの、到着後すぐネットに接続したい人は、事前に日本でeSIMを用意しておくのがおすすめです。

そして、海外旅行保険も必須項目の一つ。
現地で病院を利用する場合、外国人には診察費や薬代が割高に請求されることが多く、また、山間部でのトレッキング中にケガをしてヘリ搬送されるようなケースでは、数十万円単位の請求が来る可能性もあります。

旅行のスタイルが短期であっても、保険・通信の2点は「旅の命綱」として事前にしっかり整えておくべき準備です。
教会やモスクでは表現や服装の配慮が必要
ジョージアは正教会(ジョージア正教)を信仰する人々が多く、教会は国民生活に深く根づいています。
そのため、教会や宗教施設を観光で訪れる際は、服装や振る舞いに十分な注意が必要です。
たとえば、以下のようなマナーを意識しましょう。
- ノースリーブやショートパンツなど露出の多い服装はNG(女性はスカーフがあるとベター)
- 大声や笑い声、飲食などは控える
- 許可なしの撮影は禁止されている場所が多い
- 手をポケットに入れたまま話す、背を向ける、教壇に座るなどは無礼とされることも
また、都市部ではイスラム教徒のモスクも存在しており、同様に異文化へのリスペクトをもって行動することが大切です。
どの国でも同じですが、「観光スポット」であっても、そこは現地の人にとって大切な祈りの場であることを忘れないようにしましょう。
観光で注目されるジョージアの特徴と「意外なギャップ」

ジョージアは、美しい山岳風景と古代から続く歴史、そして素朴な人々との出会いが魅力の国です。
観光地としてのポテンシャルも高く、近年はヨーロッパやアジア各国からの旅行者が急増しています。
一方で、観光客の中には「思っていたのと違った」「こんなところに注意が必要だった」と感じる「意外なギャップ」も少なくありません。
この章では、ジョージア観光の魅力とともに、旅行者が戸惑いやすいポイントも正直に紹介していきます。
地元料理の塩分・脂分は体調管理に影響することも
ジョージア料理はその美味しさと独自性で世界的に評価が高く、日本人の舌にも合いやすいと言われています。
人気メニューには、チーズ入りパンの「ハチャプリ」や、肉や野菜を包んだ水餃子のような「ヒンカリ」などがあります。
しかしその反面、塩分や脂肪分がかなり高い料理が多く、毎食これらを摂っていると体調に影響を及ぼす可能性もあります。旅行中はつい食べ過ぎてしまうこともあるため、胃腸が疲れないように、日によっては果物やヨーグルトなど軽めの食事を意識的に取り入れることが大切です。
また、水道水の飲用は避けた方が無難とされており、スーパーなどで売られているミネラルウォーターを購入するのが一般的です。
ミネラルバランスが異なるため、人によっては便秘や下痢になるケースもあるので、整腸剤を持参しておくと安心です。
英語が通じにくいが、親切な地元民が多い
ジョージアでは、若い世代を中心に英語を話せる人も増えていますが、公共機関や地方都市では英語が通じにくいケースが多いのが現実です。
特に中高年層やタクシードライバー、小規模商店では、ロシア語かジョージア語しか通じないこともあり、旅行者が戸惑う場面がしばしばあります。
とはいえ、地元の人々は総じてとても親切でフレンドリー。
たどたどしい英語でも、一生懸命コミュニケーションを取ろうとすれば、笑顔で応じてくれる人が多いのがこの国の大きな魅力です。
また、翻訳アプリや指差し会話帳を活用すれば、大抵の場面では対応可能です。
「言葉が通じない=怖い」という感覚ではなく、「通じないからこそ工夫が必要」という心持ちで向き合えば、逆に交流が楽しくなることもあります。

治安は急変しにくいが、インフラ整備が不十分な地域も
ジョージアは治安が比較的安定しており、暴動や大規模な犯罪に巻き込まれるリスクは極めて低いとされています。
しかし、都市部を離れて地方へ行くと、道路の舗装状況が悪い、交通手段が少ない、急な停電や断水が起きるといった、インフラ面での「生活的ストレス」を感じることがあります。
特に山岳エリアでは、天候の急変によって交通機関が止まる、通信が不安定になるといったケースも多く、自然を楽しみに行く旅では柔軟なスケジュール管理が求められます。
また、都市部でもホテルや民泊の水回り・暖房・Wi-Fi環境には当たり外れがあり、「写真と違う」とがっかりする旅行者も少なくありません。
そのため、宿泊予約の際には口コミやレビューの内容をしっかり確認し、できれば「実際に利用した日本人」の声を参考にすることをおすすめします。
まとめ|ジョージア旅行の危険性の本質は「情報不足」にある
ジョージアは、ヨーロッパとアジアの中間に位置する独自の文化と歴史を持つ国であり、近年は長期滞在しやすく、物価も安く、風景も美しいと話題の旅行先です。
しかし、その一方で「治安が悪そう」「地政学的に不安」といった印象を持つ人がいるのも事実です。
今回の記事を通じて見えてきたのは、ジョージア旅行が危険とされる背景には、実際の犯罪や情勢よりも「情報不足」や「誤解」が大きく影響しているということです。
- 一部エリアやナイトスポットでは軽犯罪のリスクがあるが、基本的に街中は平和
- ロシアとの関係は緊張状態が続いているが、旅行者の日常には大きな影響は少ない
- 入国は驚くほど簡単で長期滞在も可能だが、インフラや文化の違いに戸惑う場面は多い
つまり、事前に知っていれば避けられるトラブルが大半だということです。
大切なのは、「危ないかもしれない」という漠然とした不安を抱えるのではなく、現地のルール・背景・文化を尊重し、備えること。
そのうえで、ジョージアの魅力である自然、食、人とのふれあいを心から楽しむ旅にしていただけたらと思います。
「危ない国」ではなく、「注意すべきポイントがある国」。
それがジョージアです。
安全で思い出に残るジョージア旅行を、ぜひあなたらしく楽しんでください。
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