【2025年最新】エルサルバドルの治安が悪い理由は?現在の現地状況を徹底解説

エルサルバドルの治安

中米に位置する小さな国、エルサルバドル。太平洋に面した美しいビーチ、手つかずの自然、素朴であたたかな人々…。そんなイメージから、近年はサーフィンや自然観光を目的に訪れる旅行者も増えています。

しかし、その一方で、「治安が悪い国」としても常にランキング上位に入ってきたのがエルサルバドルです。
実際に、メディアではたびたびギャングによる暴力事件や政府の強硬姿勢が取り上げられ、「エルサルバドル=危険」という印象を持っている人も多いのではないでしょうか。

この記事では、エルサルバドルの治安がなぜ悪化したのか、その歴史的背景から現在の状況までをわかりやすく整理し、2025年の時点での最新情報と共にお届けします。

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目次

なぜエルサルバドルは治安が悪いと言われるのか?

治安が悪い理由

一国の治安の悪さには、複数の歴史的・社会的要因が複雑に絡んでいます。

エルサルバドルもその例に漏れず、内戦の後遺症、移民政策の影響、経済格差、統治機能の低下、ギャングの台頭と政府の対応といった問題が複雑に絡み合い、現在の治安不安に繋がっています。

内戦終結後に武器が民間に流出

エルサルバドルの治安悪化の根底にあるのは、1980年代から1992年まで続いた内戦の爪痕です。
この内戦では、政府軍と左翼ゲリラ勢力(FMLN)との激しい戦闘が繰り広げられ、多くの武器が国中に流れました。戦後、その武器の多くが回収されることなく、民間や犯罪組織の手に渡ったとされています。

特に問題なのは、戦争経験のある元兵士や若者たちが経済的に行き詰まり、武器を使って生計を立てる道を選んだことです。この流れが、のちのギャング文化の形成につながっていきます。

米国からのギャングの逆輸入

エルサルバドルの風景

1990年代以降、アメリカ合衆国は不法移民の強制送還政策を強化しました。この影響で、多くの中米出身者が母国に戻されることになったのですが、なかでも問題だったのが、ロサンゼルスなどでギャング活動をしていた若者たちがそのまま祖国に戻されたことです。

彼らは現地に根付いた犯罪組織の一員としてではなく、「アメリカ仕込みのギャング文化」やネットワークを持ったままエルサルバドルに戻ったため、国内の若者にとっては“かっこいい存在”として影響力を持ち始めました。

これがMS-13(マラ・サルバトルチャ)18thストリート・ギャングなど、中南米全域に広がる凶悪組織の母体を形成することになります。

経済的困窮と社会的不平等が拡大

エルサルバドルの経済は長らく停滞しており、失業率や貧困率は高止まりしたままです。
若者の多くは正規雇用に就くことができず、希望を持てない社会の中で、ギャングに入ることが“数少ない生きる道”になっているのが現実です。

こうした構造は、単なる犯罪の温床というよりも、社会制度そのものの欠陥を映し出していると言えるでしょう。
貧困家庭では教育機会も限られており、「勉強するよりもギャングに入った方が早く稼げる」と考える若者が後を絶たないのです。

ギャングによる組織的犯罪が横行

エルサルバドルの風景

MS-13をはじめとするエルサルバドルのギャング組織は、麻薬取引だけでなく、恐喝、誘拐、殺人、武器密輸、人身売買といった組織的犯罪を展開しており、その規模と影響力は国家をも上回るとも言われています。

彼らは学校、病院、公共交通、商店街などあらゆる地域社会に“税金”という名の恐喝を強いており、住民たちはギャングの許可なしには自由に生活できない状況に追い込まれている場所もあります。

つまり、国家ではなく、ギャングがその地域の“ルール”を支配しているのです。

国家の統治能力の低下

政府はこうした状況を打破しようと、過去に何度も対策を講じてきましたが、国家の統治力はギャングの圧力や内部の腐敗によって弱体化しています。
多くの市民は、警察に助けを求めることすらせず、「ギャングに屈するしかない」と諦めてしまっているのが実情です。

さらに、裁判制度も機能しておらず、犯罪者の多くが処罰を免れている状況では、一般市民にとって“正義”はもはや期待できない言葉となっています。

ギャングと政府の癒着疑惑

エルサルバドルの火山

2020年代前半には、エルサルバドル政府がギャング組織と密約を交わしていた可能性が国際的に報道され、大きな波紋を呼びました。選挙前に治安改善を実現する見返りに、刑務所内での待遇改善や摘発の見逃しを約束したというものです。

もしこれが事実であれば、国家そのものがギャングと取引をしているという信頼性の崩壊を意味し、市民の不信感はさらに高まりました。

過剰な治安対策と人権侵害

2022年以降、ブケレ大統領による強権的な治安対策が進められ、ギャング構成員と見なされた者の大量逮捕が実施されました。その結果、殺人件数は劇的に減少したとされる一方で、無実の市民が誤認逮捕される、人権が無視される、刑務所内の環境が地獄のようだという告発も相次いでいます。

つまり、「表向きの治安改善」の裏には、強権による統制と犠牲になっている人々の存在があるのです。

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現在もエルサルバドルの治安は悪い?外務省のデータから解説

「今のエルサルバドルは本当に危険なのか?」という問いに対しては、「地域によって大きく異なるが、基本的には警戒が必要」というのが正確な答えです。

表面的には一時的な落ち着きを見せているものの、根本的な治安改善には至っていないエリアも多く、旅行や長期滞在に際しては慎重な判断が求められます。

危険レベルは1〜2の地域しかない

エルサルバドル外務省

日本の外務省が発表している「海外安全ホームページ」では、エルサルバドル全土に対して危険レベル1〜2が継続して発出されています(※2025年4月時点)。

  • 危険レベル1:十分注意してください
  • 危険レベル2:不要不急の渡航は止めてください

首都サンサルバドルや国境周辺の一部地域では、特にレベル2が適用されており、観光目的や一時的な訪問であっても「控えるべき」とされています。
ただし、地方の一部には比較的落ち着いているエリアもあり、状況を的確に把握することが重要です。

また、ブケレ政権による「治安回復キャンペーン」によって、公式統計上は殺人発生率が過去最低水準にまで下がっているとされています。
しかしこれには、実態として報告されない事件の存在や、警察による数値操作の可能性があるという批判も根強く、数字だけで「安全になった」と判断するのは危険です。

「6区への不要不急の立ち入りは控えてください。」

外務省は特に、「第6地区」と呼ばれる危険地域への立ち入り自粛を明確に警告しています。

これは、サンサルバドル市内の中でも、かつてからギャング抗争が激しく、今なお組織的犯罪の拠点とされる地域です。この地域では、

  • 警察すら日中しか入らないエリア
  • ギャングが独自に“通行税”を設けて支配している通り
  • 夜間の外出が即命に関わるようなゾーン

が存在するとされており、地元住民でさえ近づきたがらないというのが現実です。

また、日本人旅行者が狙われやすいのは、「カメラをぶら下げて歩いている」「スマートフォンを手に持っている」「単独で行動している」といったケースです。

治安が改善されたように見える今だからこそ、観光客の油断が新たなターゲットにされる可能性が高まっているとも言えます。

現地の交通事情や情報網も脆弱で、いったん危険な地域に迷い込んでしまうと助けを呼ぶ手段がなくなる恐れもあるため、渡航前の地図チェックや信頼できるガイドの同行は必須です。

エルサルバドルで気をつけるべき危険エリア

エルサルバドルの風景

エルサルバドルの中にも、比較的安全とされる観光エリアは存在しますが、一方で、「うっかり入り込んでしまうと命の危険がある」ような地域も現実に存在します。

とくに首都サンサルバドルとその郊外は、ギャングの支配力が根深く残っており、地元の人でも立ち入りを避けるエリアが明確に存在します。

サンサルバドル市内の一部は今も危険

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この記事を書いた人

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