ウィーンのクラシック音楽、ザルツブルクのアルプスの風景、美しい街並みに支えられたオーストリアは、ヨーロッパの中でも非常に人気のある旅行先のひとつです。治安が比較的良く、清潔で秩序ある国としても知られており、初めてのヨーロッパ旅行先としても選ばれることが多い国です。
しかし、そうした「安心感」の裏側には、日本とは異なる文化や規則、そして旅行者が見落としがちなマナーやルールも潜んでいます。
この記事では、オーストリア旅行中に特に注意すべき16のポイントを、「現地でやってはいけないこと」に焦点を当てながら詳しく解説します。
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- オーストリア旅行でやってはいけないこと|16の注意点を解説
- 都市部(特にウィーン中心)ではスリ・置き引きが多発
- 署名詐欺(偽募金活動)に注意、親しげに近づいてくる人には警戒を
- 公共交通では「チケットの刻印(打刻)」を忘れると罰金対象
- 歩行者信号無視や自転車レーン侵入も罰金対象(最大36ユーロ)
- バスは前方ドアから乗車、後方乗車は注意されることも
- トラムは優先交通、横断時は左右をよく確認
- 夜間や郊外の公園エリアは避け、単独行動は控える
- レストランではチップ(5〜10%)が常識、会計時に上乗せして渡す
- 水道水は基本飲めるが、地方では事前確認を
- 公共施設のトイレは有料(50セント〜1ユーロ)で小銭準備必須
- 教会・修道院では露出を控える(ノースリーブ・短パンNG)
- 夏でも朝晩は冷え込みが激しく、天候も変わりやすい
- 冬季のトレッキングや登山ではアイゼンが必要な場所もある
- ゴミの分別・ポイ捨て・路上喫煙への目が非常に厳しい
- ウィーン市内では犬のフン放置に罰金、街の清潔感を保つ市民意識が高い
- 公共Wi-Fiは速度や接続が不安定なこともあるため、SIMやeSIMの事前準備推奨
- まとめ|注意点を意識して、安全なオーストリア旅行を
オーストリア旅行でやってはいけないこと|16の注意点を解説

オーストリアは治安の良さや秩序だった社会で知られていますが、その分、マナー違反やルール違反には非常に厳しい側面があります。
旅行者が気づかずにやってしまいがちな行動が、罰金や周囲からの冷たい視線につながることも。
この章では、実際に現地で“やってはいけない”とされる16の注意点について、具体例を交えてわかりやすくご紹介します。
都市部(特にウィーン中心)ではスリ・置き引きが多発
ウィーンは世界的にも安全な都市として知られていますが、それでも観光地や公共交通機関を中心にスリや置き引きが頻発しているのが現実です。とくにカールスプラッツ駅、シュテファン大聖堂周辺、そして地下鉄構内や観光客が集まるカフェでは、気づかぬうちにバッグの中身を抜き取られていた、という被害が報告されています。
街の中心地にあるスーパーから出てきてすぐ東ヨーロッパ系の女性にバックの中から財布を盗まれた。リスクメイトの投稿より
見た目には紳士的だったり、親しげな若者に声をかけられて気を緩めてしまうと、その隙を突かれることがあります。カバンは常に前に抱えるようにし、背負ったままにしないことが基本です。また、貴重品は一か所にまとめず分散して持つ意識も重要です。
署名詐欺(偽募金活動)に注意、親しげに近づいてくる人には警戒を

オーストリアの都市部では、署名活動や募金活動を装って観光客に近づいてくる詐欺グループの存在にも注意が必要です。彼らはたいてい笑顔で紙を差し出し、「この活動に賛同してください」と声をかけてきますが、署名をすると最後に強引にお金を要求してくるケースが非常に多いのです。
断ると怒鳴られる、周囲を囲まれてしまうというようなケースも一部で報告されており、毅然とした態度ではっきりとNOと言うことが最も効果的な対処法です。
特にシュテファン広場や観光バス乗り場、駅周辺など人の往来が多い場所では、このような偽装活動が目撃されやすいため、声をかけられても相手にせず、足早にその場を離れるのが最善の方法と言えるでしょう。
お花を手渡して金銭を要求する詐欺がありました。それほどしつこくないのですが、カップルの男性を狙って声をかけているようでした。1度受け取るといらないと言ってもお金を要求されるので、欲しいわけではなければ絶対に受け取らないように気をつけてください。リスクメイトの投稿より
公共交通では「チケットの刻印(打刻)」を忘れると罰金対象
オーストリアの公共交通では、改札がない代わりに信用乗車制度(セルフチェック)が採用されています。これはチケットを持っているか、そして使用開始時に「刻印(打刻)」をしたかを、抜き打ちで車内検査官がチェックする仕組みです。
チケットを購入していても、刻印を忘れていた場合は“未使用”と見なされて罰金の対象になります。その金額はおおむね105ユーロ前後(約17,000円)と高額で、観光気分でうっかりしていると大きな出費につながります。
電車やバスに乗る際は、駅の券売機または乗り場の刻印機で打刻を済ませてから乗車するのが基本です。英語表記もあるため安心ですが、迷った場合は近くの係員に尋ねると丁寧に教えてくれます。
歩行者信号無視や自転車レーン侵入も罰金対象(最大36ユーロ)
日本ではつい“赤信号でも車が来なければ渡る”といった行動をしてしまいがちですが、オーストリアでは歩行者の信号無視に対しても罰金が科されることがあります。金額は最大で36ユーロ。たとえ急いでいても、赤信号での横断は避けるべきです。
また、自転車専用レーンにも要注意です。ウィーンのような都市では、歩道と自転車レーンが明確に分かれており、間違って歩くと危険であるだけでなく、罰則対象になる可能性もあります。レーンの色やマークをよく確認し、特に写真撮影や地図確認などで立ち止まる際には、自分がどこに立っているか意識するようにしましょう。
観光に夢中になってルールを見落とすと、現地の人から注意されたり、思わぬ出費につながることもあるため注意が必要です。
バスは前方ドアから乗車、後方乗車は注意されることも
オーストリアの市内バスでは、乗車マナーにも暗黙のルールが存在します。そのひとつが「前方ドアからの乗車」です。特に地方のバスや小規模な路線では、前方ドアから乗ることが原則となっており、後方ドアから乗車しようとすると運転手に止められたり、乗車を拒否されることもあります。
これは乗客が正しくチケットを持っているかを運転手が確認するためで、無賃乗車の防止という意味合いがあります。
また、降車時は後方ドアが使われるのが一般的ですが、混雑状況やバスの種類によっては異なるため、地元の人の動きに合わせるのが無難です。
観光客だからといって例外扱いはされないため、事前に正しい乗車位置や降車マナーを理解しておくと安心です。
トラムは優先交通、横断時は左右をよく確認
ウィーンをはじめ、オーストリアの多くの都市ではトラム(路面電車)が街中を走っています。このトラムは自動車や歩行者よりも“優先される交通機関”とされており、横断時には必ず左右をよく確認する必要があります。
トラムは静かに近づいてくるため、音に気づかずに線路を横切ると非常に危険です。また、トラムが停車している場合でも、車両の間から突然渡ろうとするのは大きなリスクを伴います。
信号がない場所でも、トラムが来ていれば歩行者は一時停止すべきという意識を持っておくことが、事故を防ぐポイントです。ウィーン市内では観光客の不注意による接触事故が起きており、ルールを知らなかったでは済まされないこともあります。
夜間や郊外の公園エリアは避け、単独行動は控える
基本的に治安の良いとされるオーストリアですが、夜間や郊外エリアでは注意が必要な場所もあります。とくに、公園や駅周辺の人通りが少なくなる時間帯には、軽犯罪が発生するリスクもゼロではありません。
また、観光地から外れたローカルエリアでは、警察のパトロールも少なく、何かトラブルが起きても対応が遅れる場合があります。女性の一人旅の場合は、暗くなってからの外出はなるべく避け、複数人での行動やタクシー利用を検討することをおすすめします。
日中は穏やかに見える場所でも、時間帯によっては印象が大きく変わることがあるため、安心せず常に周囲の雰囲気を意識しながら行動することが大切です。
レストランではチップ(5〜10%)が常識、会計時に上乗せして渡す
オーストリアでは、レストランやカフェでのチップはマナーというより“常識”とされています。日本のように「サービス料込み」が当たり前ではないため、ウェイターの給料の一部としてチップ文化が根づいています。
一般的には、伝票の合計金額に対して5〜10%を上乗せして支払うのが基本です。たとえば、18ユーロの食事なら20ユーロを渡す、もしくは「20でお願いします(Zwanzig, bitte)」と伝えることでスムーズにやりとりができます。
注意点としては、お釣りをもらってからテーブルに小銭を置くスタイルはあまり一般的ではないということ。むしろ、支払時にチップを含めた額をその場で提示する方がスマートとされ、現地の人々にも好印象を与えます。
水道水は基本飲めるが、地方では事前確認を

オーストリアの水道水はヨーロッパの中でも非常に高品質で、安全に飲めるとされています。特にウィーンでは、アルプスの天然水が水道水として供給されているほどで、ミネラルウォーターを買わなくても十分に安心して飲むことができます。
ただし、地方都市や山間部、古いホテルなどでは水質が安定しないケースもあるため、念のためホテルスタッフや現地の案内に従うのが賢明です。
また、外出先で水を飲みたい場合は、“Trinkwasser”と表示されている蛇口や水飲み場なら安全な飲用水です。何も表示がない水道や装飾用の噴水などは飲まないようにしましょう。
公共施設のトイレは有料(50セント〜1ユーロ)で小銭準備必須
オーストリアでは、公共施設やレストラン、駅構内のトイレが有料であることが一般的です。料金はおおむね50セント〜1ユーロ程度で、回転式ゲートや料金箱が設置されているスタイルが多く見られます。
とくに観光客が集まる場所では、無料トイレを探すのが難しい場合もあるため、小銭を常に持ち歩くことが重要です。1ユーロ硬貨はトイレだけでなく、コインロッカーやカートなどにも使えるため、何枚か手元にあると便利です。
また、ホテルやカフェなどのトイレを利用する場合でも、「お客様以外は利用禁止」と書かれていることが多いため、カフェで飲み物を注文してから借りるのがマナーとされています。
教会・修道院では露出を控える(ノースリーブ・短パンNG)

歴史的建造物としても魅力的な教会や修道院は、オーストリア旅行のハイライトのひとつです。ただし、宗教施設である以上、服装には配慮が必要です。
具体的には、ノースリーブ、タンクトップ、ショートパンツ、ミニスカートなどの露出が多い服装はNGとされており、入口で入場を断られる、もしくはスカーフやローブの着用を求められる場合があります。
特にウィーンのシュテファン大聖堂やザルツブルク大聖堂など、格式の高い施設では、服装マナーが旅行者にも適用されるため、観光中も肌の露出を控えめにするのが無難です。夏場であっても、軽めの羽織り物やストールを持っておくと、柔軟に対応できます。
夏でも朝晩は冷え込みが激しく、天候も変わりやすい
オーストリアは気候が変わりやすく、夏であっても朝晩は肌寒い日が多くなります。特に山岳地帯や標高の高い地域では、日中との気温差が10度以上になることもあり、風が強く吹くことも。
観光で外にいる時間が長くなると、急な冷え込みや雨に対応できず、体調を崩す原因にもなります。そのため、夏の旅行でも薄手のジャケットやウィンドブレーカーは必須アイテムです。
また、ウィーンやインスブルックなどでも、突然の雨に見舞われることがありますので、折りたたみ傘や防水アウターの準備もしておくと安心です。
冬季のトレッキングや登山ではアイゼンが必要な場所もある
オーストリアはアルプスの絶景と豊かな自然を誇る国であり、特に冬季はスキーやスノートレッキングを目的に訪れる旅行者も多くなります。しかし、冬の山岳地帯では観光地であっても凍結や積雪による危険が伴います。
特に標高の高い山や氷の残るトレイルでは、滑落を防ぐためにアイゼン(滑り止め金具)や防寒ブーツなどの本格装備が必要となる場合があります。安易に“観光感覚”で登ろうとすると、怪我や遭難のリスクが高まります。
登山やスノーウォークを楽しむ際は、事前に天候・ルート・装備要件を確認し、必要に応じて現地のツアーやガイドを利用するのが安全です。地元では「装備不足は事故のもと」という考えが徹底しており、準備不足の登山者に対する視線も厳しいことを覚えておきましょう。
ゴミの分別・ポイ捨て・路上喫煙への目が非常に厳しい
オーストリアは環境意識の高い国として知られており、街中の美しさや空気の清浄さを保つために、ごみのポイ捨てや分別無視に対しては厳しいルールがあります。たとえ観光客であっても、公共の場でゴミを落としたり、路上にたばこの吸い殻を捨てると、高額な罰金(数十ユーロ以上)を課される可能性があります。
ゴミ箱は街の至る所に設置されており、多くは紙・プラスチック・金属・生ごみといった分別が明確に分かれているので、内容を確認して正しく捨てるようにしましょう。
また、屋外での喫煙も原則自由ではありますが、人混みや駅、施設の出入口付近などでは喫煙禁止区域が増えており、見つかると注意や罰金の対象になります。煙草を吸う際は、灰皿のある指定エリアに限定するよう意識してください。
ウィーン市内では犬のフン放置に罰金、街の清潔感を保つ市民意識が高い

オーストリア、特にウィーンでは、犬との暮らしが非常に一般的で、ペットフレンドリーな環境が整っています。ただし、その一方で、飼い主のモラルやマナーに対する社会の目も非常に厳しいのが特徴です。
最も代表的なのが、犬のフンの放置による罰則。街の歩道や公園で犬のフンをそのままにしておくと、最高で50ユーロ以上の罰金が科されるケースもあります。観光客が誤って踏んでしまうなどのトラブルも発生しており、市の衛生対策は非常に徹底されています。
犬の散歩中にはフンを取るためのビニール袋が支給される施設もあり、市民も積極的に協力しています。街を汚さない、という意識は市民・旅行者共通のマナーであり、それを守ることで気持ちの良い旅を実現できます。
公共Wi-Fiは速度や接続が不安定なこともあるため、SIMやeSIMの事前準備推奨
ウィーンやザルツブルクなどの都市では、カフェや駅、ホテルに無料Wi-Fiが提供されているスポットも多くあります。しかしながら、接続が不安定だったり、速度が極端に遅い、登録に時間がかかる、利用制限があるといった問題に直面することもあります。
地図アプリや翻訳アプリを使いこなしたい旅行者にとって、通信環境は非常に重要です。現地のWi-Fiに依存せず、旅行前にプリペイドSIMやeSIMを用意しておくことで、どこでも安定してインターネットに接続できる安心感があります。
最近では、eSIMであれば現地でのSIM交換不要で即時アクティベートが可能なため、スマートフォン操作に慣れていない人でも利用しやすくなっています。公共Wi-Fiは補助的に使い、常に通信手段を確保しておくのがトラブル回避のコツです。

まとめ|注意点を意識して、安全なオーストリア旅行を
オーストリアはその清潔さや秩序、治安の良さなど、日本と似た価値観や環境を持つ国として、多くの旅行者に安心感を与えてくれる国です。だからこそ、「特に注意しなくても大丈夫だろう」と油断してしまいがちですが、実際には日本とは違うルールや文化、習慣がしっかりと根付いている国でもあります。
今回ご紹介したように、公共交通の刻印ミスが高額罰金になったり、チップや服装、ゴミの分別などに対して非常に厳しい意識があったりと、“日本と近いのに決して同じではない”という点を理解することが安全で快適な旅行の鍵になります。
「ルールを守る」「相手を尊重する」という日本人が得意とする価値観こそが、オーストリアで気持ちよく過ごすための最大の武器です。トラブルを避けながら、文化や人々との出会いを楽しみ、記憶に残る素敵な旅にしてください。
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