カーニバルの熱狂、リオのビーチ、アマゾンの大自然。ブラジルは、旅行先としても非常に人気のある国です。
しかし、その魅力の裏に、「治安がやばい」と言われ続けてきた根深い現実が存在しています。
SNSや旅行ブログでも「盗まれた」「脅された」「警察すら信用できない」といった体験談が見られ、多くの旅行者にとって“行ってみたいけど怖い”という印象がつきまとう国になっています。
この記事では、「なぜブラジルの治安は悪いのか?」という根本的な背景から、危険な都市や女性旅行者が直面しやすいリスク、さらに比較的安全な場所や対策まで、2025年時点でのリアルな治安事情を詳しく解説していきます。
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なぜ「ブラジルの治安はやばい」と言われるのか?

ブラジルの治安が悪い理由は、単に「犯罪者が多い」からではありません。
むしろ、その裏には歴史的、経済的、政治的な背景が複雑に絡んでいるのです。ここでは、治安の悪化を招いている主な要因について深掘りしていきます。
極端な経済格差とスラム(ファベーラ)の存在が根本原因
ブラジル社会における貧富の差の極端さは、世界でもトップクラスと言われています。
首都の一等地から数キロ離れただけで、水道や電気も満足に通っていないファベーラ(スラム街)が広がっているのは決して珍しいことではありません。
こうした環境では、子どもたちが教育を受けられず、若年層が犯罪組織に巻き込まれていく流れが“当たり前”のように存在しています。つまり、貧困と犯罪がセットで再生産されており、社会構造そのものが治安悪化の温床になっているのです。
サンパウロ市ど真ん中のビジネス街近くで元カレと夕方カフェでアイスを食べていたら、銃を持った男が侵入。カフェには私たちを含め3組ぐらいしかいなかったが、私たちに銃を向け、金を出せと脅した。だが、よく見ると銃口が震えている。強盗初心者らしい。ポルトガル語がよく話せない日本人の元カレが抵抗しようとしたので、それを制止し、ある意味「強盗用」のお金を財布から出したが、全部持って行きそうだったので、「帰りのバス代ぐらいは返してよ」と言うと、素直にその分だけ返してくれた。震えてたし、何か憎めない?強盗だった。 でも、その後、私の身体の震えが止まらなくなった。リスクメイトの投稿より
リオデジャネイロのコパカバーナビーチ沿いでは、高級ホテルが建ち並び観光客でにぎわう一方、背後には小高い丘に広がるファベーラが密集しています。ほんの数百メートルの違いで、まったく異なる“治安レベル”が存在しているのがブラジルの特徴でもあります。

麻薬密売と武装ギャングが都市部に浸透している

ブラジルは、南米最大の国であると同時に、麻薬の密輸ルートとしても重要な位置を占めています。
特にコロンビアやボリビアなどから流入する麻薬が、ブラジル国内を経由してヨーロッパへと運ばれる過程で、地元のギャング組織がこれを管理・流通させているのです。
この麻薬ビジネスを牛耳るギャングは、貧困層の若者を手先として雇い、ファベーラを“要塞化”して武装し、警察と日常的ににらみ合いを続けています。
つまり、大都市のすぐそばに「国家の支配が及ばない武装地帯」が存在しており、その緊張状態が日々の犯罪や市民生活にも影響を与えているのです。
観光客が巻き込まれる事件の多くも、こうした“都市型犯罪と麻薬の交差点”で起こっているケースが少なくありません。
警察と犯罪組織の衝突が一般人に被害を与えている
ブラジルでは、警察の治安維持活動が過激化しており、容疑者への発砲や“超法規的処刑”が行われることもあるという深刻な状況があります。
これに対してギャング側も応戦するため、結果として住宅街や市場での銃撃戦に市民が巻き込まれるという事件が日常的に発生しています。
2023年には、リオのファベーラで行われた大規模な警察突入作戦で無関係の一般市民を含む20人以上が死亡したケースも報告されており、“治安維持”が逆に不安をあおる結果にもなっているのです。
さらに、警察内部の汚職や暴力事件も多く、「守ってくれる存在」というよりも「近づくと危ない存在」として見られている側面すらあります。
政治腐敗と法の不均衡が治安改善を阻んでいる

ブラジルの政治は長年にわたって汚職と利権の構造にまみれてきた歴史があり、治安対策も場当たり的で一貫性に欠ける傾向があります。
また、司法制度の不備により、罪を犯しても逮捕されなかったり、すぐに釈放されてしまう例も多いため、犯罪の抑止力が機能していません。
市民の間には、「どうせ捕まらない」「自分が通報しても意味がない」という無力感が広がっており、それがさらに犯罪を増長させる悪循環を生んでいます。
つまり、ブラジルにおける“治安のやばさ”とは、単なる治安維持の失敗ではなく、社会の構造そのものが長年放置されてきたことによって形成された深刻な課題なのです。
治安が悪い都市はどこ?ブラジルの危険エリアを紹介

「ブラジルは危ない」と一言で言っても、実際には都市によって危険度に差があるのが現実です。
一部のエリアでは比較的安全に過ごせる反面、「行かないほうがいい」「昼間でも危険」と言われる都市や地区も確かに存在しています。ここでは代表的な3都市を取り上げ、その危険性の背景を掘り下げていきます。
リオデジャネイロは“治安最悪”と呼ばれる理由がある
カーニバルやビーチ、美しい夜景で世界的に知られる観光都市リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)ですが、残念ながら“治安最悪都市”としても長年悪名高い存在です。
リオの最大の問題は、富裕層と貧困層がほぼ隣接して共存していること。
たとえば、有名な観光地・シュガーローフ山やキリスト像のあるコルコバードのすぐ近くにも、ファベーラ(スラム街)が広がっており、麻薬組織が支配するエリアが混在しています。
観光客が狙われるのはこうした地理的要因によるもので、以下のような事件が日常的に発生しています。
- ビーチで荷物を置いた瞬間に盗まれる
- 路上でカメラを見せた瞬間に強奪される
- 夕方以降、ホテル付近で刃物を突きつけられる
さらに、ファベーラでは日常的にギャングと警察の銃撃戦が起きており、運が悪ければ“流れ弾”に当たる可能性すら否定できないのが現状です。
ガイドブックでは華やかな観光地として紹介されているリオも、実際には徒歩移動や夜間の外出は極力避けるべき都市であると言わざるを得ません。
サンパウロではスラム周辺が特に危険
ブラジル最大の都市であり、経済の中心でもあるサンパウロ(São Paulo)は、リオよりも都会的で洗練された印象を持たれがちですが、こちらも治安面で決して油断できない都市です。
2015年ブラジルで最大人口のスラム街、ホッシーニャRocinhaにアポ無しで入ろうとしたところ、スラムの入り口両脇を警備していた10歳くらいであろう少年2人組にマシンガンを突きつけられた。私は両腕を天高く突き上げながら慌てて『観光に来ただけだ、大人を呼んでくれ!』と銃を構える少年兵にお願いした。少年達は大声でおーい、と大人を呼び、私は大人に事情を伝えたところ、ホッシーニャに入場することを許され事なきを得た。街ではバーでお酒を飲んだりして日没まで楽しんだ。リスクメイトの投稿より
サンパウロで特に危険なのは、都市の中心からやや外れた場所にあるファベーラ群やインフラの整っていない住宅地域です。観光客が訪れやすいセントロ(旧市街地)でも、以下のようなリスクが報告されています。
- バス停での置き引き、ひったくり
- 偽警察官による検査を装った詐欺
- 目立つ服装をして歩いていたら尾行された
特に治安が悪いとされる地区には、
- カポン・レドンド(Capão Redondo)
- ジャルジン・アンジェラ(Jardim Ângela)
- ヘプブリカ周辺(República)
などがあり、日中であっても一人歩きは避けるべきとされています。
サンパウロは非常に広い都市であり、エリアによって“天国と地獄”の差が激しいため、滞在先の選定や移動ルートの下調べは非常に重要です。
レシフェ・フォルタレザも殺人率が高く注意が必要
観光客にはあまり知られていないものの、北東部の都市レシフェ(Recife)やフォルタレザ(Fortaleza)も、実は非常に高い殺人率を記録している都市です。
これらの都市はリゾート地としても開発が進んでいますが、その裏側では貧困、麻薬、ギャングの問題が深刻化しており、地元住民すら不安を抱えながら暮らしています。
観光地であっても、以下のような危険が報告されています。
- 路上でのスマホ使用中に襲われる
- バスや市内電車での集団スリ
- 観光客向けの“案内役”を装った詐欺や誘導強盗
特に夜間は、ホテルの周辺でも油断はできません。観光業者が用意した移動サービスを利用するなど、“徒歩移動をできるだけ避ける”ことが安全な旅の基本になります。

女性がブラジルを訪れる際に直面しやすいリスクとは

「南米は情熱的でフレンドリー」といったイメージを持って渡航する女性旅行者も多いですが、ブラジルにおいてはその文化的なギャップや行動の違いが、時に危険な状況を引き寄せてしまうこともあります。
特に日本人女性のようにアジア系で目立ちやすい外見は、犯罪者やナンパ目的の男性の標的になりやすいという現実があります。
性的ハラスメントや痴漢は発生率が高い
ピニェイロスからの帰り。わりと空いていたバスの中。窓際に座っていた私の隣に太った60代ぐらいの男が座った。カーブや運転の荒さにバスの揺れが酷くなる度にじいさんの身体が密着してくる。変だな、と思っていたら揺れがなくても密着、太股にも手が伸びてきた。窓際で逃げ道もないので、仕方なくカバンの中のペンケースからカッターを取り出し、思いっきりパキパキと歯を出して見せたら、人間てそんなに飛ぶのか、と思うくらいに通路側に吹っ飛んだ。そのじいさんは慌てて別の席に移っていった。リスクメイトの投稿より
ブラジルでは、ストリートハラスメント(Catcalling)と呼ばれる路上での性的な声かけが、日常の一部のように行われています。
特に観光客に対しては、“軽いノリ”で済まそうとする現地男性が多く、「かわいいね」「こっちにおいで」「一緒に飲まない?」といった軽口から始まり、しつこく尾行されるケースも報告されています。
また、リオやサンパウロの公共交通機関では、通勤時間帯のバスや地下鉄で痴漢行為が横行しているという声も多く、混雑した車内でのボディタッチや密着行為に悩まされるケースも珍しくありません。
問題なのは、こうした行為に対して被害者が声を上げづらい空気があること。
加害者が開き直る、周囲が見て見ぬふりをするなど、“助けを求めても誰も動かない”空間が、被害をさらに悪化させる温床となっているのです。
服装や言動が誤解を招くこともある
ブラジルの都市部では、露出度の高い服装がファッションとして受け入れられている傾向もありますが、外国人女性が同じような服装で街を歩くと、別の意味に受け取られてしまうこともあります。
例えばショートパンツやノースリーブ、身体にフィットした服を着ているだけで、「誘っている」と誤解され、不要な声かけや接触の原因になる可能性もあります。
また、日本人女性の話し方や笑顔が「親しみ」としてではなく、「好意がある」と捉えられてしまう文化的ギャップもあります。その結果、断ってもしつこく付きまとわれる、逆上されるといった事態にも発展しかねません。
現地では、「冷たい態度」「無視する姿勢」が最も有効な自己防衛とされる場面もあるため、相手に“すき”を見せない行動が重要です。
現地の性別観を理解することが自己防衛につながる
ブラジルは表向きには男女平等が進んでいるように見えますが、実際には“マチスモ(男性優位の価値観)”が根強く残る社会です。
「男性はリードするもの」「女性は口答えしないもの」という暗黙の文化が存在し、それが日常的な性差別やハラスメントの温床にもなっています。
とくに地方都市ではその傾向が顕著であり、「女性が一人で旅行している=軽い女」「誘いに乗ってくれる」と誤解されることもあり、一人旅や夜間の外出はリスクが跳ね上がると考えておく必要があります。
また、LGBTQ+に対する理解も都市部では広がっていますが、地方や保守的な地域では偏見が根強く、同性カップルが公にふるまうことでトラブルになるケースも報告されています。
したがって、女性が安全に旅をするためには、現地の価値観を理解したうえで、自己防衛意識を高めることが不可欠です。
意外と安全?ブラジルの治安が比較的良い場所

「ブラジル全体が危険」というのは少し大げさで、実際には観光客が安心して過ごせる都市やエリアも存在します。
治安の良し悪しは都市ごとに大きく異なり、地方都市や特定の高級住宅街では、警備が強化されており犯罪発生率も低い傾向にあります。
クリチバやフロリアノポリスは比較的穏やかで人気上昇中
まず紹介したいのが、南部の都市クリチバ(Curitiba)とフロリアノポリス(Florianópolis)です。
これらの都市は観光地としての知名度こそリオやサンパウロには劣りますが、近年は「安全でクリーンな街」として国内外からの評価が高まっているエリアです。
- 都市計画がしっかりしており、公共交通やゴミ収集などが整備されている
- 住民の教育水準が高く、市民意識も成熟している
- ファベーラの数が少なく、大規模なギャング抗争が少ない
- 南国リゾートとして有名で、観光業を中心に発展してきた都市
- 島全体がひとつの自治体で管理されており、治安管理もしやすい構造
- サーファーや自然派旅行者に人気があり、犯罪発生率はブラジル平均よりも大幅に低い
どちらの都市も、女性の一人旅や長期滞在にも向いている場所として欧米の旅行者の間でも支持を集めており、「ブラジルの中で最も安全な都市」として名前が挙がることもあります。
高級エリア(サンパウロのジャルジンス等)は警備体制が万全
サンパウロやリオデジャネイロのような大都市の中でも、富裕層が住む高級住宅街は警備体制が整っており、比較的安心して過ごせるエリアです。
特にサンパウロのジャルジンス地区(Jardins)や、リオのレブロン(Leblon)といった地域は、観光客でも安全に滞在できる場所として知られています。
- 高級ホテルやブランドショップ、ミシュラン星付きレストランなどが並ぶ一等地
- 街全体が監視カメラと警備員によって管理されている
- 犯罪が起きにくく、仮にトラブルがあってもすぐに対応される体制が整っている
ただし、これらの高級エリアにいても、「安全ボケ」しないことが重要です。
高級住宅街に滞在していても、ひとたび郊外に出たり、夜道を徒歩で移動したりすれば、ターゲットになりやすい状況に変わることもあります。ホテルの外に出るときは、目的地とルートを明確にし、不用意にスマートフォンや財布を人目にさらさないことがポイントです。
まとめ|ブラジルは危険だからこそ正しく知って安全に旅するのが大切
ブラジルは、魅力があふれる国です。
圧巻の大自然、独特の文化、音楽、そして情熱的な人々。サッカーやカーニバル、リオの美しいビーチは世界中の人々を惹きつける強力な観光資源となっています。
けれどその一方で、治安の悪さという現実が、多くの旅行者にとって大きな壁となっていることもまた事実です。
本記事では、以下のような視点からブラジルの治安を掘り下げてきました。
- なぜブラジルは「治安がやばい」と言われるのか?
- 危険とされる都市やエリアの特徴
- 女性旅行者が直面するリスクと文化的背景
- 比較的安全な都市・エリアの情報
ここで改めて強調したいのは、「危険だから行くべきではない」という極論ではなく、危険だからこそ、知識と準備をもって行動することが重要だということです。
治安の悪いエリアに足を踏み入れない、夜間の外出を避ける、高価な持ち物を見せびらかさない、現地文化に配慮する…。これらを徹底するだけでも、トラブルに巻き込まれる確率は格段に下がります。
また、現地では「防犯は自己責任」という文化が強く、助けを期待するよりも、自分の判断と行動で身を守ることが必要です。ホテル選びや移動手段、現金の持ち歩き方、服装や態度まで、すべてが安全かどうかを左右する要因になります。
どこの国でもそうですが、旅行にはリスクがつきものです。大切なのは、そのリスクを「知らなかった」ではなく、「知っていて準備していた」という状態で向き合うこと。そうすれば、ブラジルの旅はより深く、より豊かで、そして記憶に残るものとなるでしょう。
陽気な音楽とともに微笑みかけてくる人々の中に、優しさもあれば危うさもあります。だからこそ、旅人としての賢さと注意力を忘れずに。
安全に気をつけながら、ブラジルという国の本当の魅力を、あなた自身の目で確かめてみてください。