北欧の国々は「治安が良い」「安全で平和」といったイメージが強く、その中でもデンマークは特に「住みやすい国」「幸せな国」として世界中で評価されています。
事実、観光客の間でも「夜でも安心して歩ける」「街が清潔で穏やか」といった声が多く、初めてのヨーロッパ旅行先としても人気の国です。
しかしながら、近年では「治安が悪化している」との噂もあり、「本当に安全なの?」「どこに気をつければいいの?」という不安の声も聞かれるようになりました。
この記事では、デンマークの治安の良さの理由と、その一方で治安悪化の兆しが見られる背景、そして旅行者が実際に気をつけるべきポイントまでを、わかりやすく丁寧に解説していきます。
\ 海外の危険情報共有マップサービス /
デンマークの治安が良い4つの理由

「治安が良い」とされる国には必ずその裏付けとなる社会的・文化的な要素があります。
デンマークの治安の安定は、単なる偶然や歴史的経緯によるものではなく、政策、教育、社会構造といった「根拠のある仕組み」が作用しているのです。
ここでは、デンマークが治安面で高く評価される理由を、4つの視点から掘り下げて紹介します。
教育と福祉を充実させ「犯罪を未然に防ぐ社会」を作っている
デンマークでは、国全体が「犯罪を起こさせない社会」を目指す姿勢を貫いています。
その根幹にあるのが、手厚い教育制度と充実した社会福祉です。
義務教育の質が高く、貧困層の子どもでも平等に教育を受けられる仕組みが整っており、若年層の失業や不登校による社会的孤立が少ないのが特徴です。
また、生活に困窮する人々には積極的に公的支援が提供されており、「犯罪を起こさなければ生きられない」という状況に追い込まれる人が少ないのです。
つまり、デンマークの治安の良さは「予防型社会」によって守られており、問題が起きる前に「社会全体で未然に防ぐ」という発想が根づいています。
警察への信頼感と通報文化が根付いている

もう一つ注目すべき点は、市民が警察に対して強い信頼を寄せているという点です。
デンマークでは、警察官の対応が非常に丁寧かつフレンドリーで、不正を正し、国民の安全を守る存在としての信頼度が高いとされています。
そのため、市民は不審な人物やトラブルを目にしたとき、ためらうことなく通報し、事件が起きる前に防ごうとする意識が根付いています。
また、デンマークの警察は街中でもよく巡回しており、観光地でもその姿を見かけることが多いです。「見守られている」という安心感が、旅行者にも広く行き渡っているのです。
公共スペースが清潔で安心して過ごせる構造で設計されている
デンマークの街を歩いて感じるのは、公共の場が非常に清潔で整っているという点です。ゴミはほとんど落ちておらず、ベンチや公園、駅の待合スペースなどもきれいに管理されています。
これは、単に清掃が行き届いているというだけではなく、「汚しにくい」「壊しにくい」「安心して使える」ように設計されているという特徴があります。
たとえば、公園や広場には適切に照明が設置されており、夜でも真っ暗になることはほとんどありません。建物のガラス面や駅の壁なども落書きや破損が少なく、見た目の美しさが安心感につながっているのです。
このような環境が人々の行動に影響を与え、「荒らすことをしない」「マナーを守るのが当たり前」という空気を作り出しています。
旅行者にとっても、「居心地のよさ」と「治安のよさ」が直結して感じられる国といえるでしょう。
小規模かつ結束力が高いコミュニティが安定性を維持している
デンマークは国土も人口も小さな国ですが、それが逆に「目が行き届く社会」「繋がりを大切にする文化」を育てています。
地方の町では、住民同士の顔が見える関係が日常的に保たれており、「地域の子どもは地域全体で見守る」という感覚が根強く存在します。
また、都市部においても、近所との関係性や地域イベント、地元への愛着が非常に強く、「個人の自由」と「共同体の責任」が絶妙なバランスで共存しているのがデンマークの特徴です。
この結束感が犯罪の抑止力となり、また問題が起きたときにはすぐに共有されて早期に対処されるという流れが自然に生まれています。
そのため、旅行者が短期間滞在する際にも、「孤立感」を感じにくく、何かあったときに助けを求めやすい安心感のある社会構造となっているのです。
一部で聞こえる「デンマーク治安悪化」の声の真相

全体的に見れば「治安の良い国」であるデンマークですが、決してすべてのエリアが安全というわけではありません。
実際に、国内外のメディアでも「一部の都市や状況によっては、治安が不安定になっている」と報道されることがあるのです。
この章では、なぜデンマークに「治安悪化」という声が一部で上がっているのか、その具体的な原因と背景を解説していきます。
移民問題と一部都市での暴動・ギャング抗争の影響
デンマークは移民受け入れに比較的前向きな国であり、これまで多くの移民を中東やアフリカから受け入れてきました。
その一方で、近年は特定の地域で移民と現地社会の間に溝が生まれ、社会的・文化的な摩擦が深まっていることも事実です。
特にコペンハーゲンのノアブロ地区(Nørrebro)やオーデンセの一部などでは、若年層の移民二世による暴力事件やギャング抗争が発生し、住民や観光客に不安を与えることがあります。
このような地域では、日中は比較的落ち着いていても、夜間になると雰囲気が変わることがあり、観光で訪れる際には「立ち寄るべきでないエリア」について事前に知っておくことが重要です。
政府もこれに対して対応を強化しており、再開発や地域教育支援などを通じて改善が進められていますが、現時点では注意が必要な地域が確かに存在するということは覚えておくべきです。
ピッキング・スリ被害は観光エリアで報告されている
治安が良いと言われる国であっても、観光地では観光客を狙った軽犯罪が発生しやすいという点は例外ではありません。
デンマークでも、コペンハーゲンのチボリ公園周辺や中央駅、観光客で賑わうストロイエ通り(Strøget)などでは、スリや置き引き、ピッキング(鍵を壊さずに侵入する手口)の被害が報告されています。
特に旅行者が被害に遭いやすいのは、以下のような状況です。
- カフェのテラス席でバッグを背もたれにかけている
- 駅でスマホに夢中になっているときに後ろから狙われる
- ホテルのロビーで一瞬目を離した隙に荷物を盗られる
また、高級ホテルでも「狙われる可能性が高い」と認識されることで犯罪の標的になりやすいため、油断は禁物です。

デンマーク人は基本的におおらかで親切な人が多いのですが、それに紛れて行動する「よそ者」もいるという前提を忘れずに、常に「自分の荷物は自分で守る」意識を持つことが大切です。

デンマーク旅行者が気をつけるべきポイント

「治安が良い国=何をしても大丈夫」と思い込んでしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
デンマークでは、法律やマナーがしっかりしているからこそ、逆に「知らずに違反してしまう」ことも多いのが現実です。
この章では、デンマークを訪れる旅行者が特に気をつけるべき生活上の注意点を、文化やマナー、日常の行動習慣という視点から解説します。

自転車専用レーンでの歩行・横断は要注意
デンマーク、特にコペンハーゲンでは、自転車は主要な交通手段の一つとして定着しています。市内のほとんどの大通りには自転車専用レーンが整備されており、自転車はかなりのスピードで走行しています。
しかし旅行者の中には、これをただの歩道と勘違いして歩いてしまったり、うっかり立ち止まって写真を撮ってしまう人がいます。
これは非常に危険な行為であり、自転車との接触事故の原因になるだけでなく、現地の人から強く注意されることも。
デンマークでは、自転車も「車両」として尊重されており、優先ルールを守るのは歩行者側の責任です。
道路を横断する際や歩道を歩くときには、必ず足元のレーン表示を確認し、青いラインや自転車マークがあれば入らないようにしましょう。
ホテル・レストランのチップ文化の誤解に注意
ヨーロッパの多くの国ではチップが当たり前の習慣となっていますが、デンマークでは少し事情が異なります。
基本的に、ホテルやレストランではサービス料があらかじめ料金に含まれているため、チップは「必須」ではありません。
ただし、レストランで非常に丁寧な接客を受けたり、ホテルで荷物を運んでもらった際などは、気持ちとして10〜20クローネ程度を渡すと喜ばれることがあります。
この点を知らずに、ヨーロッパ基準で多めのチップを毎回支払ってしまうと、無駄な出費になったり、現地の相場とズレた対応になってしまうこともあるので注意が必要です。
ポイントは、「義務ではなく気持ち」という感覚でチップを渡すこと。
過剰に渡す必要はなく、感謝の意を込めた一言と共にさりげなく渡すのがスマートなやり方です。
カフェや公共スペースでの荷物管理が大切
治安が良い国であるがゆえに、観光客が「大丈夫だろう」と油断してしまいやすいのが、カフェや図書館、駅の待合室などでの荷物の管理です。
たとえば、席取りのためにリュックを椅子に置いてトイレに立つ、スマホをテーブルに置いたまま席を離れる、といった行動は、たとえデンマークでも絶対に避けるべきです。
実際、こうした油断を突いたスリや置き引きの被害は後を絶たず、特に旅行者が多いコペンハーゲン中心部では毎年多くの報告が寄せられています。
荷物は常に身体の前、もしくは膝の上に置く。スマホや財布はテーブルに置きっぱなしにしない。
「誰も盗らないだろう」という思い込みではなく、「誰かが狙っているかもしれない」という意識が、安全な旅を守ります。
まとめ|デンマークは安全だが「思い込み」が危険を呼ぶこともある
デンマークは、世界でも屈指の治安の良さを誇る国です。
教育・福祉・警察・街づくりなど、さまざまな側面から「犯罪を未然に防ぐ社会づくり」が実現されており、訪れる旅行者にとっても「安心して滞在できる国」としての信頼感は非常に高いと言えるでしょう。
しかし、そんな国でも「安全神話」に頼り切るのは危険です。
- 一部都市では移民問題や暴動が背景にある「治安の揺らぎ」が発生している
- スリや置き引きといった観光客特有の軽犯罪は報告されている
- マナーや交通ルールを知らないことで、意図せずトラブルを引き起こすこともある
つまり、「危険が少ない国」であっても、最低限の知識と慎重な行動は必要不可欠だということです。
一方で、それらのポイントを事前に知っていれば、デンマークは本当に心地よく、快適で、文化や自然を深く味わえる国です。小さな町のカフェでほっと一息つく時間も、公園で地元の人とすれ違う瞬間も、安心感があるからこそ楽しめる豊かさがあります。
「安全だと聞いたから行く」のではなく、「どうすればもっと安全に、快適に楽しめるか」を考えて行く。それが、デンマークを本当の意味で満喫する旅の第一歩です。
\ 海外の危険情報共有マップサービス /